2009 Summer
月は私たちにとって最も身近な天体です。みなさんも親しみを込めて「お月さま」と呼んだことがあるでしょう。今から千年以上も昔に書かれた「竹取物語」には、かぐや姫が月の都へ帰るというファンタジーがえがかれています。古の人々も、月に対する親しみやあこがれを持っていたんですね。
旧暦の8月15日に昇る月「中秋の名月」を鑑賞する「お月見」の風習は、もともと中国から伝わりました。「お月見」は、次第に収穫の感謝祭と結びつき、収穫したイモを供えたことから「いも名月」とも呼ばれています。
ところで、1年間で何度も見える満月の中で、なぜ、旧暦の8月15日(現在の9月~10月)の月が「名月」とまで呼ばれるのでしょうか?
それは、秋の月が最も美しく見えるからです。あまり知られていませんが、満月は季節によって南中高度(月が一番高く昇ったときの位置)が違います。冬は満月がほぼ頭の真上の位置まで昇り、逆に夏は低い位置までしか昇りません。春と秋はちょうど見やすい位置まで昇りますが、春は春霞で見にくく、秋は空が澄んでいるのできれいな月を見ることができます。また、夏は蒸し暑く、蚊も出ますし、冬は寒くて鑑賞には向きません。日本の気候や秋の虫たちのハーモニーが聞こえる季節的なものから考えても、秋の夜が月を見るのに適しています。