2006 Autumn

◆「冥王星」惑星でなくなる!?
 「惑星」とは、恒星の周りを回る天体のことで、太陽系においては、質量の十分に大きなもののみを「惑星」と呼んでいました。 「惑星」という呼び方は、惑星が夜空でまどうような動きを見せることからついた呼び方ですが、「惑星」とはどんな天体のことをいうのか、というきちんとした定義はこれまでありませんでした。19世紀の初めから、火星と木星の間には、多くの天体が見つかっていましたが、それらは、水星よりも小さく、「惑星」に対して「小惑星」と呼ばれるようになりました。
 1930年に発見された冥王星は、はじめ、地球ほどの大きな惑星と思われていたのですが、観測技術が高まっていくにつれ、その推定直径値がどんどん小さくなっていき、ついには、惑星の中で一番小さいとされていた水星よりも小さいことが分かってきました。さらに、1992年以降、冥王星がある付近に同じような軌道をもつ小天体がどんどん見つかってきました。これらは、「エッジワース・カイパー・ベルト天体」などと呼ばれています。2005年には、冥王星よりも大きな直径をもつ天体「2003UB313」が発見され、"第10惑星か!"と話題になりました。いうなれば、観測技術の高まりにつれ、惑星と小惑星の間が埋まってきてしまったのです。
 そこで、2006年チェコのプラハで開かれた国際天文学連合(IAU)総会では、議論を重ねた上、8月24 日に惑星の定義を定めました。新しい「惑星」の定義は、以下のとおりです。

1.太陽の周りを回っている。
2.重力が、固体に働く他の色々な力を上回り、重力平衡形状(ほとんど球形の形)を持っている。
3.自らの軌道の近くに他の天体がない。

この「3」に冥王星が当てはまらないため、冥王星は「惑星」から除外されることになりました。しかし、冥王星自体がなくなったわけではありません。冥王星はdwarf planet(ドワーフ・プラネット:まだ日本語の名前が決まっていません)というグループに入りました。

◆惑星発見の歴史
 水星・金星・火星・木星・土星の5つの惑星は、明るい星として見えるので、ずいぶん古くから知られていました。古代メソポタミア(約5000年前、現イラク付近)の人々は、この惑星の動きを天からのメッセージと考え、その動きを熱心に研究しました。これが占星術の始まりです。こののち、ずいぶん長く5惑星の時代が続きました。  1600年代、コペルニクスが発表した地動説(地球も太陽のまわりを回っている考え)が受け入れられるようになって、私たちの地球もようやく惑星のグループに入りました。  1781年、イギリスのハーシェルは自作の望遠鏡で夜空をながめるうちに土星の外側をまわる天王星を偶然発見しました。その後、天文学の進歩によって、1864年にフランスのルベリエとイギリスのアダムスにより、海王星が発見されました。そして、アメリカのトンボーが1930年、今回話題になった冥王星を発見したのです。  76年前に発見された冥王星は、約250年かけて太陽のまわりを回るのですが、発見後3分の1を移動する前に惑星のグループから外されてしまったということになったわけです。また、1995年以降、太陽系外の惑星の発見数が現在約200個もあるというのも驚きです。